■消化器の異常
糖尿病では消化器の異常はいろいろありますが、おもなものは次のようなものです。
- 便秘
便秘はしばしばみられます。便秘の原因の一つに自立神経障害からきた大腸の運動低下があります。規則正しい食生活と、便意をもよおしたら我慢しないですぐに排便するなどの習慣が大切です。食物線維(食物繊維)を多くとるのも一つの方法です。それでも便秘の続くときは下剤(緩下剤)を用いてもかまいません。
- 下痢
下痢は自立神経障害の強い人(とくに長期間血糖コントロール不良の人)に多くみられ、このため、ますます糖尿病のコントロールが乱れてしまいます。ふだんから血糖のコントロールを良くしておき、下痢の場合には水分の補給を十分に行いましょう。また、下痢による低血圧の注意の必要です。
- 胃の運動障害
糖尿病の人では胃の緊張が弱いため、食物が胃にもたれ十二指腸へ送られるのに時間がかかる人が時々みられます。このような人では食物の吸収が一定でないので、血糖のコントロールがしにくくなります。とくに自立神経障害のある人に多く、このような人は食事を少しづつ何回にも分けて食べるとよいようです。
- 脂肪肝
肝臓に脂肪がたくさんたまったものを脂肪肝といいます。これは、
1.アルコールの飲みすぎ
2.肥満(栄養のとりすぎ)
3.糖尿病
の人に多いのですが、節酒や体重減少、血糖のコントロールなどで改善します。
- 胆石症
胆石症は中年の、とくに女性に多くみられます。胆石症の人は、胆のう炎が続発する場合がよくあります。
■糖尿病の消化器に対する症状
消化器系のすべての部分は,糖尿病の影響をうけている。
その胃腸症状は、便秘、腹痛、悪心、嘔吐、下痢、便失禁などである。
糖尿病の患者さんは、しばしば、無症候性の消化管異常を、伴っている。
糖尿病の消化器系機能障害は、糖尿病それ自体からも、起きるが、糖尿病合併症からおきることのほうが、多い。
糖尿病神経障害は、胃腸管の運動異常、悪心、嘔吐、腹痛症候群を、おこす。
糖尿病性血管障害は、腸管虚血の病因として、考えられる。
<<糖尿病における腹痛>>
糖尿病性ケト−アシド−シスを、おこすと、腹痛、嘔吐が、しばしば起こる。
これは、胃拡張と腸のイレウスによるものでは、ないかと、推定される。
慢性の腹痛は、糖尿病性感覚神経障害の結果としておきる。
痛みは、押さえつけられるような痛みや、鋭い痛みで、時には、焼け付くような痛み、突き刺すような痛みがみられる。
糖尿病では、消化管運動性の直接の障害が生じて、低運動性や、さらに無緊張(アトニ−)を生じるが、神経障害によるものである。
<<糖尿病における咽頭と食道>>
咽頭と食道の運動異常は、糖尿病患者で、しばしばみられる。
逆流性食道炎やカンジタ食道炎などが、みられる。
カンジタ食道炎羽、糖尿病に関連した免疫不全のためにおきる。
糖尿病性胃アトニ−の患者さんでは、胃拡張と胃の残留物の増加がみられる。
胃の内容物の排泄遅延が、みられる。
これは、胃収縮の不活発化や幽門の痙攣が、関与しているものと思はれる。
この結果、悪心、嘔吐がみられる。
糖尿病では、胆石の合併がおおい、これは、糖尿病では、コレステロ−ルの合成が増加してたり、糖尿病そのものが、異常な胆汁を分泌するのでは、ないかといわれている。
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