薬物療法は、経口血糖降下剤の服用とインスリン注射に大別されます。
経口剤は、基本的には食事療法や運動療法だけでは血糖が十分にコントロールできない2型(インスリン非依存)の人に用いられます。
インスリン注射は1型(インスリン依存)の人には不可欠ですが、2型の人にも必要な場合は用いられます。
経口剤では、古くからスルホニル尿素剤とビグアナイド剤が使われています。
現在はさらにαグルコシダーゼ阻害剤とインスリン抵抗性改善剤が加わりました。
インスリン抵抗性改善剤には、インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)を改善する効果がみとめられています。
経口剤の服用に際しては、患者さん自身も薬の名前や効用、副作用などをよく知っておくことが大切です。
もし、転居などで医師や病院をかえる場合には、新しい医師に今まで服用していた薬を正確に伝える必要があります。服用のしかたも、医師の指示を守ることが大切です。
インスリン療法は、1型(インスリン依存)糖尿病の人や妊娠を希望する糖尿病患者さんには欠かせません。
また、食事療法や運動療法のほかに、経口剤による治療を行ってもどうしても血糖が正常化しない人、腎臓障害や肝臓障害がある、筋肉の萎縮が強い、極度に痩せている、結核や肺炎のような感染症がある糖尿病患者さんなどにもインスリン療法が用いられます。
インスリン療法をうまく行う為には、血糖の自己測定が役に立ちます。
自己測定値を参考にインスリンを調節し、血糖値を上手にコントロールしていくのです。
インスリン注射は、患者さん本人(幼児の場合は家族)が行います。最近はペン型の注射器も普及し、簡単にできるようになりました。
注射は、腹部、大腿部の上半分または上腕の外側、臀部の皮下に行います。
注射の時間は、ふつう、食事の30分前です。
糖尿病の人の最も重要なコントロールの指標は血糖値です。
そこで、インスリン治療を行っている人は、よい血糖コントロールの状態を保つ為に、家庭や職場などでも血糖値を自分で測定するとよいでしょう。
その結果をノートなどに記録し、自己管理に役立ててください。
測定器については、主治医に相談して下さい。
1. |
血糖値が比較的安定している人 |
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・空腹痔血糖値を知る為に、2〜3日に1度、朝食前。
・1日の血糖値の動きを見る為に、1〜2週間に1度、毎食前と毎食2時間後、および就寝前の計1日7回。
・低血糖など、何か異常を感じたとき。 |
2. |
血糖値の変動幅の大きい人 |
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・毎食前と就寝前の計1日4回。
・必要に応じて、1日血糖検査をする。
・深夜や早朝に低血糖が起こりやすい人は、深夜(午前3時)の測定も参考になります。 |
3. |
妊娠している人 |
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・毎食前と就寝前の計1日4回。
・2週間に1度、1日血糖検査。
・低血糖など、何か異常を感じたとき。 |
主な経口血糖降下剤と心配される副作用です。
●スルホニル尿素剤
インスリンを産生・分泌する膵臓のβ細胞に直接働いて、インスリンの分泌を促進する。
副作用として、低血糖に注意する必要がある。
●ビグアナイト剤
インスリン分泌促進作用をもたず、単独で低血糖を起こすことはないが、まれに血中の乳酸が増加し、
アシドーシス(酸性血症)を引き起こすという副作用がある。
スルホニル尿素剤と併用することが多い。
●αグルコシダーゼ阻害剤
腸管での糖質の分解・吸収を抑え、食後に見られる急激な血糖の上昇を抑制する。
おなかが張る、放屁が増えるといった消化器の副作用が多い。
●インスリン抵抗性改善剤
インスリンの作用を高め、インスリン抵抗性を改善することによって、血糖低下作用を示す。
まれに肝障害や浮腫などの副作用が見られる。
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